こうやって、毎日事務所に来て、探偵というお仕事を見ていると、自分も参加してみたくなってしまうものなんですね。
わたしが一番興味を持ったのが、“相談員”。
他の事務所には、相談だけを担当する人もいるらしいのです。
社長曰く、やはり保険会社での営業経験者が多いようなのですが。
でも・・・。
うちの事務所は、基本的に、社長が自分で相談に応じ、悩みを聞き、自分の足で調査に行くことをモットーにしているんですね。
どこかの大手の探偵事務所のように、相談役、調査役なんて分けず、ちゃんと調査をわかっている人が説明したうえに、納得してもらうのが必要なんだって。
この社長、実は昔、フランチャイズの事務所を構えていたそうです。
長く続けていると、やはり自分のしたい希望が出てきたみたいで、名の通った会社名を捨て、独立したそうなのです。
それで、余計、こだわりみたいなのが出てきて、うるさくなってしまっていたんですね。
わたしが相談に行けることなんて、この先、期待できそうにないです。
でも・・・。
声をかけてもらえてたんですよ。
調査の同行に。
事務所にいるとき、社長からかかってきた電話。
“お前、調査についてくるか?”
かなり、舞い上がってしまいました。
どんな調査かも聞かずに、“はい”なんて答えてしまったわたし。
“すぐに来い”という社長の言葉に、指定された場所に急ぐわたし。
事務所から10分ほどのところで、社長の車に乗りこむ。
すぐに出発した社長の車がたどり着いたのは、ラブホテルでした!かなりの驚き。
一瞬、誘われたのか、騙されたのか、と身構えてしまいましたが、大きな勘違い。
社長の目は、真剣そのもの。
家庭用のビデオカメラを手渡され、通常のようにカメラを構えるのではなく、倒し気味にしたシートにもたれ、お腹の上にカメラを置いてセットするように指示された。
ちょうど、助手席の窓から、外の景色を撮れるように。
ゆっくりと駐車場内に入り、車両のチェック。
“あった”という社長の視線の先に、1台の黒いセダン。
わたしの緊張は最高潮。
そのまま、ゆっくりしたスピードのまま、その黒い車に近づく。
緊張のあまり、カメラを持つ手が汗ばんでいるのがわかる。
スピードはそのままで、駐車場の出口を出る。
しばらく無言のまま、近くのパチンコやの駐車場まで進み、車を駐車する。
これが、わたしの調査初同行でした。
これほど緊張したことって、初デートとか、試験とか、もう比にならないくらいだったのです。 |